監督署・未払残業対策
監督署・未払残業対策
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kantokukan_coming ある日、労働基準監督署の監督官を名乗る人から電話が入り、「○月○日 の○時に会社に伺って、御社の労務管理状況について確認したい」旨を告げられた。さあ、どうしたものか?どんな調査を受けるのか、心配で心配で、、、、。


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まず「定期監督」といって、全国的な調査・指導課題に基づき、各地の労働基準監督署が、年間計画に沿って、ある意味「事務的」に調査・指導を行うケースです。勿論、事務的とは言え、法違反が見つかれば「是正勧告」が出されることになりますので、簡単に考えては後で痛い目に会います。そして近頃結構増えているのが、「申告監督」と言って、会社の従業員(または家族)が、自分の勤める会社の労基法違反を直接に監督署の監督官に訴える(申告)ことで、監督官が申告のあった会社の法令違反を調査・是正するための「行政指導」です。これは、定期監督と比べると「調査対象」が事前に絞られていますので、申告の事実の有無について重点的に調査が行われます。ほとんどのケースが、「未払い残業」を巡る「申告」で、会社に対し「2割5分以上の率で計算した割増賃金を平成○○年○○月○○日に遡及して支払ってください。」という「是正勧告書」が出されます。


労基法101条 の1 
労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる

労基法102条
労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う

労基法104条の2
労働基準監督官は 、この法律を施行するため必要があると認めたときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる

要する に監督官には「逮捕・送検」する権限がある訳です。だからやっぱり監督署は怖い?

でも遡及支払いを命じる権限なし

本来労働契約は、私人間の契約であり、そこから発生する紛争も、最低賃金不払いといった憲法に定める生存権を脅かすような紛争でない限り、私人間で解決するのが基本であると解されます。あくまで私ごとの揉め事は、民事不介入の原則により、国が積極的に介入すべきものではなく、また刑事罰を科す問題ではありません(引用:河野順一著「労働基準監督機関の役割と是正勧告」)。要するに、支払いを命じることができるのは、裁判所の裁判官以外にない、ということです。


昭和
57216日基発第110号「賃金不払い等に係る法違反の遡及是正について」の内部通達を巡る解釈

昭和62年5月22日朝日新聞朝刊の旧労働省労働基準局監督課長松原東樹氏コメント記事「指摘された通達は、監督官の業務指針として出した内部文書だ。3カ月という限度を設けたのは、割増賃金の対象となる労働時間の調査が大変手間取る作業で、1年も2年も遡るのは不可能に近く、3カ月ぐらいなら何とか調べられると判断したからだ。それに、未払い分の支払いを命じる権限は、労基法上はない。しかし、何もしないのはまずいので、勧告している」。

平成22119日「労働基準監督機関の役割に関する質問に対する答弁書」

内閣答弁抜粋:「・勧告や指導は、厚生労働省の所掌事務に関する行政指導として行うもの。

・ 現在、労働基準監督官が、労基法上、同法に違反して支払われていない賃金の支払いを命ずる権限を有していないことは、昭和62年当時と同様である。・労働基準法第101条に基づく臨検等は、犯罪捜査のために行うものではないが、いずれにせよ、同法の施行に必要な限度で行うことができるものである。」



「是正勧告」「是正指導」はあくまで「行政指導」の一つで す。「逮捕・送検」に至るケースというのは、余程悪質な場合でしょう。だから、監督官が何でもかんでも権力を振りかざしてということは無いはずです。

※ 行政手続法32条1項
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならない こと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。


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辞めた社員からある日突然、退職日から2年間遡って、未払いの残業代を請求して来るケース。近頃当然のように起こります。不景気から転 職もままならず、とにかくお金に余裕が無い。勤めている間は口に出せなかったが、辞めてしまえば会社と対等だ。正々堂々と自分の権利を主張するという人が確実に増えています。監督署に「申告」する場合や、弁護士や司法書士を代理人にする場合があります。

jq058最近よくあるケースは、「始業前残業」の請求。盲点とも言えますが、始業前に朝礼をやっている会社や30分前には出勤して仕事の準備をしていると いう会社は、世の中多いのではないでしょうか?例えば、9時始業のところ、毎日のタイムカードの記録が8時30分前後となれば、月21日出勤で30分×21 日=630分(10時間30分)、毎日の諸手当を含む時間当たり単価が2,100円で割増賃金未払いが1カ月27,562円。これが2年分になると661,488円になります。しかも、監督署レベル では、この661,488円の未払い金額を巡る「攻防」で済みますが、弁護士や司法書士が関与して訴訟に持ち込まれると、この未払金661,488円が倍額の 1,322,976円になることもあります。

※ 労基法第114条(付加金の支払)
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあったときから2年以内にしなければならない。

未払残業代計算式

以下、ご参考までに、未払い残業として請求を受けやすいケースを例示します。


1.経営に参画しているとは言えない課長、部長に残業代を支払っていない
2.採用時に残業代は○○手当に含まれていることをしっかり伝えている
3.営業職は営業手当を支払っており、残業代はそれに含まれていることは会社の慣例
4.毎日の残業時間計算で30分未満はカットしている
5.始業前に15分の朝礼を毎日実施している



どこが問題になるのでしょう

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確かに難しい問題です。この問題の対策を考えるに当たっては先ず
「労働時間の定義」を理解する必要があります。

労働時間=「労働者が使用者の指揮命令下において、労働者がその命令に沿った労働の提供を行った時間」

この定義に従えば、使用者の指揮命令下に無い時間は労働時間にカウントされないということになります。

例えば、











こんな時間まで労働時間に換算されてしまうと、余りに会社に負担を強いることになると思いませんか?

ここで、タイムカード打刻時間が直ちに実際の労働時間とは言えないとした判例を紹介しましょう。
〔三好屋商店事件・東京地判・昭63.5.27〕
一般に使用者が従業員にタイムカードを打刻させるのは出退勤をこれによって確認することにあると考えられるから、その打刻時間が所定の労働時間の始業もしくは終業時刻より早かったり遅かったとしても、それが直ちに管理者の指揮命令の下にあったと事実上の推定をすることはできない。

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平成221029日提出 質問第103号・平成22119日内閣衆質176答弁(抜粋)

(質問)国が、国家公務員の勤務時間の把握につき、「職員の正確な勤務時間が把握できない」と認識しているタイムカードにつき、民間に対しては、その打刻時刻にもとづいて労働時間を算定すること、ならびに、これにより算出された労働時間から、賃金の支払いを強要することは、おかしいのではないか。

(答弁)ご指摘のようにタイムカードの記録により算定された労働時間に基づく賃金の支払いを強要しているわけではなく、タイムカードの使用を含め、個々の事業場の実情に応じた適切な方法により確認された労働時間に基づき、賃金を支払うよう行政指導を行っている。



◎日頃から、会社がきちんと従業員の労働時間を管理しており、「残業」についても常に「申請・許可」の手続を取っているという状況であれば、上記の例のようなケースは「労働時間」と見なされないという主張も成り立つのではないでしょうか。

労働時間管理を徹底する

○勝手な残業は許さない
○付き合い残業も許さない
○時間中の手抜きも許さない





このような労働時間管理が困難な従業員に対しては、時間外手当を毎月固定額で支払うという手法
固定残業手当
も有効になります。
判例によれば「時間外手当を固定額で支払うことも、法所定の割増賃金を上回っている限り適法である」(関西ソニー販売事件・大阪地裁・昭63.10.26)とされており、「所定労働時間分の賃金と時間外労働分の賃金をそれぞれ明示すべきである」

※賃金規程に何時間分の割増賃金を○○手当として支払う云々の記載が必要です。




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