相談事例
相談事例
作成日:2017/02/28
社員が実際はストレスが高いのに医師面接を申し出ず、会社がメンタルヘルス上の問題を把握できず、就業上の配慮ができなかったため、うつ病等を発症し長期間の休職に至った場合、会社の安全配慮義務が問われるのか?



労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」とされており、また、労働者のストレス状態やメンタルヘルス上の問題の把握は、ストレスチェック以外の機会で把握できる場合も考えられますので、ストレスチェック結果を把握できないからといって、メンタルヘルスに関する企業の安全配慮義務が一切なくなるということはありません(ストレスチェック制度関係 Q&A 厚労省)。

 さらに最高裁判例東芝事件:第2小法廷平成26年3月24日判決)においても、以下のように企業の安全配慮義務が強く求められております。

「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康にかかわる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っているところ、労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、上記のような情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきである」。

以上のようにストレスチェックを実施したことで「企業の安全配慮義務」が、果たせたことにはなりません。逆にこれまで以上に労働者のメンタルヘルスの状況を把握できる環境を企業側は与えられた訳で、企業にとってはこれまで以上の注意を払って労働者のメンタルヘルス不調を把握する努力が求められることになったと言えるでしょう。

要するに、ストレスチェックは当然実施すべきですが、その後のフォローを手抜きすると企業のリスクがさらに高まることになるということです。くれぐれもご注意ください。

 

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