相談事例
相談事例
作成日:2014/10/13
非喫煙者から「喫煙者は休憩時間以外にもタバコ休憩を取っており不公平ではないか」との不満の声があがり、休憩時間以外の喫煙を禁止したいと思いますが、いかがでしょうか?



A. 冷静に考えれば、非喫煙者から不公平の声が挙がるのも当然でしょう。この喫煙時間を休憩時間と見るか、あるいは労働時間の一部と見るか(トイレに行ったり水を飲んだりする時間は生理的に必要な時間で労働時間の一部とされており、また飲食業従事者の喫煙時間を「手待ち時間」の一部、即ち労働時間の一部と認定した裁判例もあるようですが。)、両者の言い分もそれぞれ一理ありますが、実際に実働時間をカウントすれば、どちらの言い分が正しいのかはっきりするでしょう(ただし喫煙者には残念ながら、カウントするまでもなく喫煙者の方が実働時間が短いという結論が出ることを覚悟してください)。
確かにA社では、これまで長年にわたり仕事中の喫煙を放任(黙認)して来ました。そして今回新たに、「仕事中持ち場を離れて喫煙すること」に対し制限を加えようとした訳で、これは喫煙社員にとっては、これまでの労働条件を不利益に変更される「労働条件の不利益変更」に該当するのは間違いありません。そしてこの不利益変更は、労働契約法第9条において「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することができない」とされ、同意のない不利益変更を否定しています。しかし、一方同法第10条では、「変更の必要性」や「内容の相当性、合理性」があれば、同意が得られない場合であっても変更が有効に認められると定められています。よって、業務上の必要性から「喫煙目的で持ち場を離れること」を止めさせることは、仕事中に限定すれば、合理性の範囲内で認められることになると考えられます。
ただし、喫煙者が同意しないまま「喫煙制限」を強行することは労使間の信頼関係を損ねることにもなりかねず労務管理上決して得策とは言えません。
そもそも「労働契約」には労働者の「職務専念義務」が課せられており、それに違背して労働時間中に私的行為を行なうことで時間を消費することは職務専念義務違反となり、認められていませんので、「ノーワーク・ノーペイの原則」により賃金をカットされても仕方が無いと言えます。
【職務専念義務】
「労働者は、労働契約の最も基本的な義務として、使用者の指揮命令に服しつつ職務を誠実に遂行すべき義務を有し、したがって労働時間中は職務に専念し他の私的活動を差し控える義務を有している。」(菅野和夫著「労働法 第九版」頁641)
「労働者は、労働契約によって所定労働時間中は、その労働力をいわば使用者に売渡した時間であるから、その時間中は使用者の指揮命令に服し、その職務に専念する義務を負い、使用者の許可承認なく勝手に業務以外のことに時間を消費することは右義務違反となる。」(安西癒著「採用から退職までの法律知識」頁157)
●結 論
先ず喫煙者の社員に対し、改めて「職務専念義務と休憩時間の公平の観点」から、これまでのように自由に喫煙することは禁止することを伝え、理解を求めます。ただし、当初案の「休憩時間以外の喫煙禁止」措置のような酷なものとはせずに、「タバコを吸う場合はその都度上司に申告し、休憩を取って吸う」ことをルール化し、喫煙者の喫煙時間が休憩時間であることの自覚を促すとともに、その都度の申告により会社側が喫煙による休憩時間を把握することができる仕組みにします。そしてこの申告された喫煙休憩の時間を賃金から実際に控除するかどうかは各経営者の判断となりますが、以下のような玉虫色的な折衷規程案もございますので、ご参考までに規程例を掲載いたします。
(私的行為に及んだ時間がある場合の賃金)
第○条 就業規則第○条(私的行為に及んだ時間)により申告された休憩時間は、その時間を賃金から控除する。
2   前項は、終業時刻までに業務が終了した場合、もしくは所定労働時間である実働8時間00分を下回る場合は、賃金から控除しないものとする。
(引用:奥村禮司著「多様な労働時間管理の運用と就業規則への規程の仕方」頁274)
冷静に考えれば、非喫煙者から不公平の声が挙がるのも当然でしょう。
この喫煙時間を休憩時間と見るか、あるいは労働時間の一部と見るか(トイレに行ったり水を飲んだりする時間は生理的に必要な時間で労働時間の一部とされており、また飲食業従事者の喫煙時間を「手待ち時間」の一部、即ち労働時間の一部と認定した裁判例もあるようですが。)、両者の言い分もそれぞれ一理ありますが、実際に実働時間をカウントすれば、どちらの言い分が正しいのかはっきりするでしょう(ただし喫煙者には残念ながら、カウントするまでもなく喫煙者の方が実働時間が短いという結論が出ることを覚悟してください)。

確かに御社では、これまで長年にわたり仕事中の喫煙を放任(黙認)して来ました。そして今回新たに、「仕事中持ち場を離れて喫煙すること」に対し制限を加えようとした訳で、これは喫煙社員にとっては、これまでの労働条件を不利益に変更される「労働条件の不利益変更」に該当するのは間違いありません。そしてこの不利益変更は、労働契約法第9条において「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することができない」とされ、同意のない不利益変更を否定しています。
しかし、一方同法第10条では、「変更の必要性」や「内容の相当性、合理性」があれば、同意が得られない場合であっても変更が有効に認められると定められています。よって、業務上の必要性から「喫煙目的で持ち場を離れること」を止めさせることは、仕事中に限定すれば、合理性の範囲内で認められることになると考えられます。

ただし、喫煙者が同意しないまま「喫煙制限」を強行することは労使間の信頼関係を損ねることにもなりかねず労務管理上決して得策とは言えません。そもそも「労働契約」には労働者の「職務専念義務」が課せられており、それに違背して労働時間中に私的行為を行なうことで時間を消費することは職務専念義務違反となり、認められていませんので、「ノーワーク・ノーペイの原則」により賃金をカットされても仕方が無いと言えます。

【職務専念義務】「労働者は、労働契約の最も基本的な義務として、使用者の指揮命令に服しつつ職務を誠実に遂行すべき義務を有し、したがって労働時間中は職務に専念し他の私的活動を差し控える義務を有している。」(菅野和夫著「労働法 第九版」頁641)
「労働者は、労働契約によって所定労働時間中は、その労働力をいわば使用者に売渡した時間であるから、その時間中は使用者の指揮命令に服し、その職務に専念する義務を負い、使用者の許可承認なく勝手に業務以外のことに時間を消費することは右義務違反となる。」(安西癒著「採用から退職までの法律知識」頁157)

●結 論
先ず喫煙者の社員に対し、改めて「職務専念義務と休憩時間の公平の観点」から、これまでのように自由に喫煙することは禁止することを伝え、理解を求めます。ただし、当初案の「休憩時間以外の喫煙禁止」措置のような酷なものとはせずに、「タバコを吸う場合はその都度上司に申告し、休憩を取って吸う」ことをルール化し、喫煙者の喫煙時間が休憩時間であることの自覚を促すとともに、その都度の申告により会社側が喫煙による休憩時間を把握することができる仕組みにします。そしてこの申告された喫煙休憩の時間を賃金から実際に控除するかどうかは各経営者の判断となりますが、以下のような玉虫色的な折衷規程案もございますので、ご参考までに規程例を掲載いたします。

(私的行為に及んだ時間がある場合の賃金)
第○条 就業規則第○条(私的行為に及んだ時間)により申告された休憩時間は、その時間を賃金から控除する。
2   前項は、終業時刻までに業務が終了した場合、もしくは所定労働時間である実働8時間00分を下回る場合は、賃金から控除しないものとする。(引用:奥村禮司著「多様な労働時間管理の運用と就業規則への規程の仕方」頁274)

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