相談事例
相談事例
作成日:2010/10/10
入院患者のAさんから「わたしの財布が無くなった」との申し出がありました。財布が無くなった時間帯に勤務していた職員全員の所持品検査を実施したいが、問題はないでしょうか?



従業員の所持品検査について最高裁判例(西日本鉄道事件・最高裁第2小・昭43・8・2判決)では、基本的人権を侵害する恐れのある「所持品検査」が適法と認められるための4つの基準を明示しています。@所持品検査を必要とする合理的理由に基づくこと、A一般的に妥当な方法と程度で行われること、B制度として職場従業員に対して画一的に実施されるものであること、C就業規則その他明示の根拠に基づき行なわれること、の4つの基準です。この基準をクリアすれば「所持品検査」を適法と認めるということです。相談例のように「勤務していた職員全員」ということであれば、「画一的に実施」という基準には該当するでしょうが、その他の基準を完全にクリアするのは中々難しいかも知れませんね。要するに、職員が進んで「所持品検査」に応ずるように「事業経営上の合理的な必要性があり、その手段方法が合理的で相当である」ことを納得してもらうよう誠意ある説明をして、くれぐれも被検査者に屈辱感や侮辱感を与えないで済む方法で行なえば、万一「就業規則等の根拠」が無い場合でも「所持品検査」が許容されることもあると考えます。それでも検査に応じない職員に対しては、「企業秩序遵守義務違反」の問題として対応する必要があるでしょう。
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