相談事例
相談事例
作成日:2014/04/16
B社製造部門の工場に6カ月前に採用した契約社員Aさんが、先月から無断欠勤で2週間が経過。総務担当者が携帯電話に連絡するが応答無い。就業規則の定めに基づき、懲戒解雇したいが、問題ないかとの相談



本来社員には雇用契約締結時点から、「企業(職場)秩序維持義務」が課されることになりますので、その義務に違背すれば、当然懲戒処分の対象となります。ただし、「懲戒解雇」となれば懲戒処分の中でも「極刑(死刑)」相当になりますので、規定の合理性や明確性と適正な手続が特に求められることになります。

よって、ご相談のケースで問題となるのは、相手方Aさんの所在が不明のため、B社の懲戒(解雇)処分の意思が伝えられないという点です。要するに「解雇」の意思が通知不能ということになり、万一後日解雇を巡って争いが生じた場合は、処分が無効とされる恐れもあります。

そこで「一定期間」無断欠勤が続き、本人と連絡が取れないケースについては、『無断欠勤が生じた日に労働者から退職の申し出(雇用の解約の申入れ)がなされたものとみなし、申し出があって(無断欠勤開始)2週間を経過した時点で意思表示は有効となり、会社側は労働者の申し出を承諾する意思表示(退職辞令)を発信することで(相手方が所在不明で到達しなくても承諾は発信主義で有効)、労働者の申出による会社との合意退職が成立したもの』との主張が可能ではないかと考えます。ただし、より確実に実務上の手続きが進められるよう、今後は採用時の雇用契約書や就業規則に以下のような明確な規定を記載する必要があるでしょう。

【規則・契約書の記載例】第○○条(当然退職)

次の各号の一つに該当するときは、各々(  )内の日を退職の日とする。

(1)死亡したとき(死亡した日)

(2)休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき(休職期間満了の日)

(3)取締役又は執行役員に就任したとき(就任した日)

(4) 会社に連絡が無く30日を経過し、会社も所在を知らないとき(30日が経過した日)

通常上記(4)のような規定例になりますが、所在不明の期間を何日間とするかについては諸説ありますが、実際の企業実務での負担等を考慮すれば、中小企業等であれば所在不明期間14日、あるいはより確実な所で30日(参照:山中健児弁護士著「労働関係ADRに必要な『民法』を学ぶ」P.98)程度が妥当ではないかと考えます。

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