相談事例
相談事例
作成日:2013/12/23
当社は係長以上を管理職とし、10万円以上の役職手当を支払っています。先日監督署の調査で係長職の状況から「管理監督者」には該当しないので時間外手当を支払うようにとの指導がありました。どうすれば良いか?



「アルコール健康障害」に関する基本法が成立
◆臨時国会で可決・成立
「特定秘密保護法」が大きな話題となった臨時国会(会期:2013年10月15日〜12月8日)でしたが、本国会において、「アルコール健康障害対策基本法」という法律が可決・成立しました。
この法律は、超党派の「アルコール問題議員連盟」により法案提出がなされたもので、この法案成立により、今後、アルコール健康障害の発生・進行および再発の防止につながることが期待されています。
◆飲酒による弊害は?
この法律の第1条(目的条文)では、「酒類が国民の生活に豊かさと潤いを与えるものであるとともに、酒類に関する伝統と文化が国民の生活に深く浸透している」一方で、「不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となり、アルコール健康障害は、本人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる危険性が高い」としており、飲酒の効用とともに、大きな弊害もあることが指摘されています。
◆「基本法」制定の意味
アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク(通称:アル法ネット)のホームページよれば、これまで、「未成年者飲酒禁止法」「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」など、飲酒を規制する法律や酩酊者の保護に関する法律はありましたが、アルコール問題に対する包括的な法律はなかったそうです。
今般の基本法の成立により、アルコール健康障害対策の総合的かつ計画的な推進、アルコール健康障害を有する人に対する支援の充実が図られることが求められています。
◆健康障害の減少に向けて
アルコールが原因で引き起こされる健康障害には、「急性アルコール中毒」、「肝臓病」、「すい臓病」、「循環器疾患」、「メタボリックシンドローム」等、様々なものがあり、アルコール依存症とうつ病の合併頻度も高いそうです。
働き盛りの会社員が仕事等のストレスから飲酒に走ってしまうケースも多くあり、基本法成立により、上記のような健康障害が減少することが大いに期待されるところです。
御社の扱いは係長職を一応管理職とみなしてはいるが、役職手当(10万円以上)の中に時間外相当分も含めて支払っているという解釈でしょうか。しかし、監督署の指摘は役職手当は時間外手当と別物なので、改めて計算して係長職に時間外手当を支払えと指導されたということですね。

この監督署の指導によれば、本来役職手当に含めていたはずの時間外手当を再度支払うことになり、二重支給の事態となって当事者の意思に反するのではないかというのが御社の言い分。

そもそもある手当に時間外手当を含める場合は、先ず規則・規程類に明示しなさいよというのが裁判所の考え方で、当然監督署の考え方でもあり、早急に御社の規則類を変更する必要があります。
その場合、監督署が認める認めないに拘わらず、係長職をあくまで「管理監督者」とみなす扱いにしたいということであれば以下のような規定にするのがベターでしょう。
【第○○条:役職手当の支給を受ける者については、時間外・休日労働の割増賃金は支給しない】。
要するに役職手当と残業手当の二重支給はしない旨の規定です(参照:安西癒弁護士著書)。

一方係長職を管理職とみなさないで役職手当に時間外手当が含まれるとする規定は、以下のようになります。
【第○○条:役職手当には○○時間分の時間外労働手当を含む】、
あるいは【第○○条:役職手当中○○万円は、時間外・休日・深夜労働の割増賃金相当額である】。

マクドナルド事件にもありましたのように裁判所が管理監督者性を認定するには結構ハードルが高いため、万一に備えて役職手当に時間外手当が含まれるとする条文を検討しておいた方が無難と考えます。

以上は今後の改善策であり、当面監督署の指導の係長職に対し役職手当と別に時間外手当を支払えとの指摘については、対象の係長と個別に「役職手当に時間外手当(○○時間分)が含まれていること」の確認書を作成し、未払いの時間外手当は無いことを監督署に主張する方法がベターではないでしょうか。
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