相談事例
相談事例
作成日:2013/01/08
先日10年近く勤めている社員Aから「1ヵ月後に退職するので、残っている有休を全部使いたい」と言ってきました。Aの有休は24日も残っており、全部取られると仕事の引継ぎもできません。どうしたら良いか?



労基法39条で定める有給休暇請求権は、労働者が一定の要件を満たせば当然発生する権利とされています。ご相談のケースでは1ヵ月後に退職する社員ということで、いわゆる使用者側に認められた時季変更権も行使できない状態になる訳ですね。こういうケースはよくあるようですが、これまでの多くの学説では、労働者の請求権を優先する視点から、退職間際の有給休暇請求は全面的に認めなければならないという考え方だったと思います。しかし、よく考えてみれば使用者側にとっては非常に不合理かつ不公平ですよね。労基法39条5項には時季変更権の定義として「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と書かれているのに、その時季変更権を全く行使できないとは使用者側だけ負担を求めることになります。片や労働者の有給休暇請求権と片や使用者の時季変更権(拒否権)という私権がぶつかる訳です。正に労働者の請求は権利の濫用と言えないでしょうか。そうであれば民法第1条の基本原則である「権利の濫用はこれを許さない」あるいは「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならい」という私権の基本原則に反すると言えないでしょうか。この辺りの考え方を丁寧に説明して、せめて半月程度は引継ぎのために出勤してもらうよう説得してみてはいかがでしょうか。

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